■今、経営者が高齢になり、後継者不足で廃業になる中小企業が後を絶たず、喫緊の課題となっている。廃業か事業存続かの岐路に立つ経営者の間で、最近、広まりつつあるのが、M&Aによる自社の売却だ。全国の中小企業にM&Aを仲介する専門会社『日本M&Aセンター』では最近年間300件のペース(現在までの成約支援数2,500件超はNO1の実績)でのM&A成約のお手伝いしています。日本M&Aセンターは、一つの譲渡案件に対し、中小企業と取引している全国の地銀、信金などから、買い手となる企業情報を集め、最も相乗効果が望める会社を見つける。雇用の確保や、社名を残すなど、売り手の意向を反映することが特徴で、これまで数多くの案件を手掛けてきた。M&Aで会社はどのように変わるのか。生き残りを賭ける中小企業の現状を経済ジャーナリストの財部誠一氏が取材した。
後継者不在の場合、会社はどのようになるのですか?
企業の最終シナリオは3つしかない!!
<第1シナリオ・・・・事業承継>
まず、事業承継を行うというシナリオがあります。優秀な息子や娘婿がいる場合、その方々に株式を相続し、事業を引き継いでいただければ大変幸せなことです。
<第2シナリオ・・・・店頭公開>
事業承継が親族に対してできない場合はどのようにすればよいのでしょう。
まず1つは株式を公開して財産権と経営権を分離する方法が考えられます。店頭公開をし、創業者としての利得を十分に取って、その上でしかるべき所から経営者を招いて事業を任せるというやり方があります。
<第3シナリオ・・・・M&Aによるハッピーリタイア>
株式が公開できないとすると、次にM&Aで株式を譲渡し、どこかの大手企業の傘下に入って創業社長はハッピーリタイアをするというシナリオがあります。この場合も大きな創業者利得が可能です。
<第4シナリオ・・・・解散による清算>
M&Aによるハッピーリタイアの時機も逸してしまった場合には事業を解散することになります。しかし、解散するのは口で言うほど簡単でなく、借入金の返済や社員の解雇など解決しなければならない問題が山ほどあります。
<第5シナリオ・・・・倒産>
さらに時機を逸し経営者自信も高齢のために能力が低下し、不安を感じた幹部社員が転職してしまうと、会社がガタガタになってしまい倒産する以外に道がなくなってしまう事すらあります。
M&Aによる株式譲渡のメリット
メリットは3つあります。
<メリット1>・・・・株主の手取額が多い
株主の手取額は清算の場合と比べてM&Aによる株式譲渡の方がはるかに多くなります。では、株式を売却するときの株価はどのようにして算出するのでしょうか。通常株式は「時価純資産プラス営業権」で出すことが日本の中小企業のM&Aでは多いようです。時価純資産は簡単に説明すると下記のような項目を時価にして算出します。
「時価純資産」・土地、株式、保険契約、会員権などを時価評価
・設備などを適正償却
・売掛金、仮払金を回収可能により評価
・在庫を売却可能性により評価
・引当金などの適正化
営業権は収益力を中心に成長性やネームバリュー、あるいは投資回収可能性などを加味して評価します。現在の考え方では例えば「30年の歴史と信頼がある”のれん”」とか「研究開発費に5億円つぎ込んだ」という様なことは余り営業権としては評価されずに、あくまで収益力を中心に評価する考え方が中心になっています。ご参考までに簡単な算出方法を述べておきます。あまり専門家の間では使用されませんが、年買法という算定の仕方があります。概ね、「利益×3〜5年」金額を営業権とします。したがって、非常に大ざっぱな言い方をしますと、「時価に引き直した純資産+利益の3〜5年を掛けた営業権を加えたもの」がM&Aの株価に成るということができます。しかし、M&Aで買い手につく企業は中堅から大手の企業が多く、その場合には必ず監査法人などの買収監査が入りますので金額的にきちんとした交渉ができるようにM&Aで株式譲渡を決意されたら、初期の段階で専門家に株価の算定を依頼し、株価算定書を作ってもらうのが懸命なやり方だと考えられます。秘密保持にも万全を期していますので気軽に下記、グループ会員に相談されることをお薦めします。
<メリット2>・・・・社員の生活が安定する
特に、オーナー社長が高齢の場合、社員は将来に対して大きな不安を持っています。又、オーナー社長であるがゆえに、社員の地位の向上も、生活の安定にも限界があります。しかし、M&Aにより親会社の傘下に入ることによって
社員から見ると安定雇用や福利厚生の向上、あるいは退職金の明確化、ステイタスの向上と言うようなことが期待でき、社員の生活が向上・安定することになります。また、オーナー社長にとっても、会社を清算する場合は長年に渡って会社で苦楽をともにした社員を一人ずつ解雇しなければなりません。これは精神的にも経済的にも大変な負担ですが、M&Aの場合は必要ありません。
<メリット3>・・・・会社が存続する
企業は創業者と社員の方々とともにその人生の大半の時間と心血を注いで作ってきたものです。この企業を存続させるか、あるいは消滅させてしまうかというのはオーナー経営者にとって大変な問題です。M&Aによる株式譲渡の場合は会社が残り、さらに大きな企業の傘下に入ることによって拡大、発展していくことができます。実際にM&Aの交渉をしていて最後に創業者から出てくる言葉は「会社を吸収合併せずに独立会社として残してほしい」とか「会社の名前をしばらくは変えないで欲しい」という様な要望が多いのです。
どのような企業が譲受を希望するのでしょう?
現時はM&Aブームです。企業を譲受けたいという会社は、非常に多くあります。私ども日本M&Aセンターへ問い合わせのある企業の中でも約75%は会社を譲受けたいという希望の会社です。しかし、検討したいというのと実際に会社を譲受ける行動に出ることとは少し違うような気がします。やはりきちんとした必然性やシナジー効果(相乗効果)がないとなかなか企業の譲受けの最終決断は出来ないものです。では、譲受け希望企業はどの様な会社があるのでしょうか?
1.創業社長の経営する成長期にある会社
こういった会社はシエアの拡大や他地区への進出を目的に非常に積極的なM&Aの実行を行っています。有名なところでは、ダイエーや加ト吉など皆さん方がよく新聞でご覧になっている企業があります。これらの企業は成長期には積極的なM&Aを行ってきました。
2.第二創業期の企業
これは先代から息子が事業承継で会社を引き継いだ企業で、これから先、若社長が20〜30年希望に胸を膨らませて経営できる企業体にするために行うM&Aです。先代から引き継いだ事業は先代が20〜30年前に創業したもので、現在では事業として形態が古くなっているケースが多くあります。自分が今後20年間夢を託せる事業でない場合は先代から引き継いだ事業をコアビジネスとしながらも未来に向かって有望な、しかも本業と関係する業種を展開していきたいと言うことで企業の譲受けにより新しい事業を始めるケースがあげられます。又、第二創業の場合は事業承継をしたばかりであり、新規事業を自社で展開するほど自社で人材が育っていないケースが多いのでM&Aによる新規事業が有効となる訳です。
3.不況業種あるいは先行不安な業種
構造的な不況になっている業種では、本業で収益をあげることできません。そのまま赤字を続ければ債務超過になり、銀行などの支援が受けられなくなります。したがって、まだ財務的に余裕があるうちに本業以外の収益構造を構築するためにM&Aを行い新規事業による多角化を目指すケースがあります。たとえば、自動車メーカーの100%下請けをしている会社だとか、造船の下請けをしている会社、あるいは公共事業の請負を中心に行っている会社では、なかなか将来的にも不況を脱出する見込みが立たないケースが多いようです。しかし、自社で新規事業を企画して進出するにはその人材や体質がついていきません。したがって、新しい収益構造を確保するために財務的に余裕のあるうちにM&Aを行って、既にノウハウとか営業力のついている会社を買収して新しい収益構造を確保するという企業戦略が有効となってきます。
【企業を譲受けるメリットと注意点】
<メリット>
「M&Aは時間を買うことである」とよく言われます。新規事業を実際に立ち上げようとすると、その準備の多さは想像を絶するものです。企画立案、マーケットリサーチ、社員教育、ノウハウの蓄積、事務所の開設、人事採用、広告などを全てクリアするためにはかなりの時間を必要とします。時代変化の激しい現代では新規事業を展開をした時は既に時代遅れということも考えられます。その点M&Aで企業譲受けにより新規事業に進出する場合は、極めて短時間に実現できます。 さらに、M&Aによる事業展開は非常にリスクが少ないということが言えます。自社で全く新しく事業を開始する場合、当然経営計画は立案しますが、計画通りの売上が上がる保証はありません。その点、M&Aなら既存の企業を譲受ける訳ですから、過去の損益状況は全て分かっています。したがって、自分たちが引き継げば、売上や経費がどうなるかは新規開業と比べてはるかに正確に予測がつきます。
<注意点>
しかし、良い事ばかりではありません。注意点としては、まず簿外負債の存在の可能性が挙げられます。簿外負債とは、帳簿や決算書に計上されていない負債のことです。資金繰りの悪化のために金融業者から借り入れを行ったが、正規の金融業者でないために決算書に計上されていなかった借入金、予測されていない退職金、会社として行っている連帯保証や脱税などが含まれます。いずれにしろ会社として支払わなければならないものですので、それを知らずに会社を譲受けると大変なことになります。又、社員に対する注意点もあります。中小企業の社員にはオヤジ「創業社長」の人柄に惚れてついて来たというタイプの人が多くいます。これらの社員の愛社心や創業者に対する思いを無視して企業を譲受け、自分流の経営を押し付けると有能な幹部社員が転職してしまったり、独立してしまうケースがあります。会社は結局、人で成っているものですから、有能な人材が流出するとノウハウや得意先もその人材について流出してしまい「空箱」を買ってしまう結果となります。しかし、創業者と社員の心情や尊厳を十分に尊重して引継ぎにあたると社員は創業者に恥をかかさないよう、新しい経営者の下で一丸となって全力を注いで業務を遂行してくれます。ちょっとした気持ちの持ち方と注意で75点の企業が一夜にして45点にも95点にも成ります。ここがM&Aの最大のツボと言えます。
M&Aを行う場合の注意点に関しましては財務・税務・法務とチェックポイントが多岐にわたります。さらに人の心の問題やメインバンク、取引先との関係の問題にまで及びます。したがって、M&Aの経験のない企業が自社でチェックすることはほとんど不可能です。又、経験のある企業であっても第三者の視点から見てもらうことが重要です。M&Aに関するリスクを少しでも減らすために、全国の日本M&Aグループ正規会員にご相談ください。(公認会計士、税理士を母体とする国内最大級のM&A組織です).
『M&Aの手順・流れ』
■よくあるご質問?
■お問い合わせは推薦会計事務所又は「とようけ経営」までご連絡ください。!!
大泉 昇 ※日本M&Aセンター 顧問(中部地区担当)